医療職から飲食ビジネス起業へ踏み切った決断の背景

医療職から飲食ビジネス起業へ踏み切った決断の背景

1. 医療職としてのキャリアと日々の葛藤

私は大学卒業後、医療職として総合病院に就職しました。患者さんと真剣に向き合い、命を預かる現場で働くことは大きなやりがいでもありました。しかし一方で、目の前の患者さんを支えることには限界があると感じる瞬間も多く、日々の業務に追われる中で「自分が本当にやりたいことは何か」と自問するようになりました。
医療現場では人の役に立つ喜びがあったものの、激務や責任の重さに心身ともに疲弊していく同僚や先輩方を目の当たりにし、「このまま定年まで同じ道を歩み続けて本当に後悔しないだろうか?」という不安が徐々に大きくなっていったのです。
そんなある日、休日にふらりと立ち寄ったラーメン店で一杯のラーメンに心から癒された経験がありました。その時、「食」という分野にも人を元気づける力があることに気付き、それ以降さまざまな飲食店を巡るようになりました。
医療と違い、飲食はもっと日常的で身近な形で人を笑顔にできる仕事なのではないか――そんな思いが芽生え、ラーメン業界への興味が徐々に強くなっていったのです。

2. 飲食業界に惹かれたきっかけ

医療職として働いていた私は、日々患者さんと向き合いながら「人の健康や幸せにもっと直接的に貢献できる方法はないか」と考えていました。そんな私が飲食業界へ興味を持つようになった大きな理由は、日本ならではの食文化の奥深さと、飲食店で感じた人と人との温かい繋がりでした。

日本独自の食文化への感動

ある日、友人と訪れた小さな居酒屋で、地元の旬の食材を使った料理や、季節ごとに変わるお品書き、そして店主の丁寧なもてなしに心を打たれました。その時、「食」を通じて地域や季節、伝統を感じられる日本の食文化の素晴らしさを改めて実感したのです。医療現場では得られなかった「五感で楽しむ体験」が、私の心に強く残りました。

飲食店で体験した人との繋がり

もう一つ印象的だったのは、常連客同士が自然と会話を交わし、お互いに気遣い合う空間でした。忙しい日々の中でも、こうした温かなコミュニティが生まれていることに驚き、「自分も誰かの日常を豊かにする場所を作りたい」と強く思うようになりました。

医療職と飲食業で感じた「やりがい」の違い

分野 やりがいの特徴
医療職 生命・健康への直接的な貢献
責任感と緊張感
飲食業 日常生活への彩り
人とのふれあい・笑顔に触れる喜び
起業への背中を押したエピソード

特に忘れられない出来事があります。それは、ある老舗和食店で隣り合わせた見知らぬ方と自然に会話が生まれ、一緒に笑顔で料理を味わえた瞬間です。「こんな風に、人と人をつなげる場所を自分でも創ってみたい」という想いが芽生え、飲食ビジネス起業への決意へと繋がりました。

リスクと向き合う決断の難しさ

3. リスクと向き合う決断の難しさ

医療職という安定したキャリアから、全く未知の飲食ビジネスへの転身を考えた時、最初に直面したのは「本当にやっていけるのか?」という不安でした。日本では医療職は社会的信用も高く、家族や友人からも「せっかく資格を持っているのにもったいない」「飲食業界は大変だよ」と心配されることが多々ありました。正直なところ、私自身もその声に何度も心が揺れました。

特に飲食業界はコロナ禍以降、不安定さが増しており、「失敗したらどうしよう」という恐怖心は常に頭の片隅にありました。しかし、それでも踏み出す決意を固めるには、自分自身の「本当にやりたいことは何か?」を徹底的に問い続ける必要がありました。

また、日本独特の「安定志向」や「世間体」をどう乗り越えるかも、大きなハードルでした。周囲から反対や心配の声が上がる中で、自分だけでなく家族にも迷惑をかけてしまうのではないか、と悩み続けました。

それでも最終的には、「失敗しても後悔しない人生を送りたい」という気持ちが勝りました。リスクと向き合う中で学んだのは、「誰もが完璧なタイミングで新しい挑戦をできるわけではない」という現実です。だからこそ、失敗を恐れず一歩踏み出す勇気こそが、新しい道を切り拓く鍵になると痛感しています。

4. 家族や周囲のサポート・反対意見

医療職から飲食ビジネスへの転職を決断した際、私が直面した最大の壁は家族や友人とのリアルなやり取りでした。日本社会では安定した職業が重視されるため、医療職という「安定」の象徴から、「不安定」と思われがちな飲食業界へ進むことに対して、多くの意見が寄せられました。

家族からの反応

家族の立場 主な反応 私の対応
両親 「安定した医療職を辞めるのはもったいない」「将来は大丈夫?」と強い心配 自分のビジョンを丁寧に説明し、不安には正直に向き合う姿勢を示す
配偶者 「本当にやりたいことなら応援するけど…」と複雑な気持ち 事業計画や生活設計を具体的に共有し、協力を求めた
兄弟姉妹 「チャレンジ精神はすごい」と一定の理解と励まし 時折相談し、客観的な意見をもらうようにした

友人たちとのやり取り

同じ医療業界で働く友人からは、「なぜ今なのか?」と疑問を投げかけられることが多くありました。一方で、異業種で活躍する友人からは、「新しい挑戦を応援する」という前向きな言葉ももらいました。意見が分かれる中で、自分自身の気持ちが揺れる場面も正直ありました。

応援と反対意見への向き合い方

  • 感謝の気持ちを伝える:どんな意見でも、自分を心配してくれる気持ちには必ず感謝を伝えました。
  • 率直に悩みや不安も話す:「全部順調」と強がるのではなく、正直に現状や不安をシェアしました。
  • 行動で信頼を得る:計画的に準備する姿勢や、小さな成果を積み重ねて報告することで、徐々に理解や応援が増えました。
  • 最終的な決断は自分:最終的には他人任せではなく、「自分で選ぶ」という覚悟を持つことが重要だと痛感しました。
教訓として伝えたいこと

転職や起業は、一人だけの問題ではありません。特に日本では家族や周囲との関係性が大切にされます。だからこそ、率直に話し合い、お互いの価値観をすり合わせる時間を惜しまないこと。そして、反対意見も受け入れつつ、自分の想いと責任を持って一歩踏み出す勇気こそが、後悔しない選択につながると私は考えています。

5. 新たな挑戦への期待と覚悟

医療職から飲食ビジネスという全く異なる分野へ飛び込むことは、私にとって大きな決断でした。しかし、この挑戦には明確な覚悟があります。

まず、新しい世界で自分の力を試したいという強い思いがあります。医療現場で培った「人を支える」という姿勢や責任感は、飲食業でも必ず活かせると信じています。一方で、これまで経験したことのない数々の壁や失敗にも直面することになるでしょう。それでも「お客様の笑顔を作る」という目標が、日々の原動力となっています。

また、日本社会で飲食ビジネスを営む意義についても深く考えています。高齢化や多様化が進む中、地域に根ざした安心できる場を提供することは、単なるサービス以上の価値があると思います。医療従事者として社会課題に向き合ってきた経験を活かし、「食」を通じて新しいコミュニティづくりや健康促進にも貢献したいと考えています。

もちろん不安やプレッシャーもありますが、自ら選んだこの道だからこそ、一つ一つ学びながら前進していく覚悟です。「変化を恐れず、一歩踏み出す勇気」が自分自身を成長させ、日本社会に新しい価値を生み出す鍵になると信じています。